三浦日記

音楽ライターの日記のようなもの

もしもエレカシがカバーアルバムを出したら (中編)

 どうやら前編・後編で到底書き切れそうもないので 「中編」を設けて続きを書いていこうと思う。前編は以下の記事。

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Track 05. 空が鳴っている/東京事変

東京事変のメンバーとエレカシは意外にも接点があって、1期のギタリストのヒラマミキオは現在エレカシのサポートギタリスト(2006-)で、亀田誠二は「Destiny」(2014)においてプロデュースを行ったことがある。椎名林檎は以前テレビ番組でエレカシの楽曲を聴いて、プライドを持って母国語の曲を書きたいと思わされたと言っていた。ソロはもちろん、東京事変の楽曲には洗練された言葉が乗せられるが、そこには日本特有の奥ゆかしさや美しさが滲み出ている。

 

エレカシも同様、日本文化のようなものを宮本が体現しようと格闘する様が曲にも顕れている。東京事変の「日本」に乗せて、エレカシの「日本」が表現されるとかなり面白い化学変化が見られるではないだろうか。この曲も女性キーの曲であるが、宮本には原曲のキーで「RAINBOW」(2015)の如く最初から最後までがなり立てる様にして歌ってほしい。特にサビの部分の<すべてを手に入れる瞬間をごらん!・・・・スローモーション・・・・ 今なら僕らが世界一幸せに違いない>のとこなんかは宮本が目を見開いて必死に歌う姿が想像できてしまう。

 

 

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Track 06. いとしのエリー/サザンオールスターズ

桑田佳祐は「ひとり紅白歌合戦」で昭和の歌謡曲を度々カバーしているが、彼の音楽のルーツには、そうした古き良き日本の歌謡曲がある。エレカシのメンバーも全員1966年生まれということもあって、そうした音楽に影響を受けていることは間違いない。「いとしのエリー」は去年の「オハラ☆ブレイク '17夏 」にてエレカシとしてではなく宮本浩次として出演したときに弾き語りで演奏された(このフェスは映像化されておらず、彼の演奏は聴けない…)。桑田のようなしゃがれ声ではなく、宮本独特の節回しを入れながら、丁寧に透き通った歌声で歌われるのもきっと悪くはないはずだ。

 

Track 07. 喝采/ちあきなおみ

この曲はNHKの「The Covers」で披露された。この放送回では「喝采」の他に同じ女性曲の「赤いスイートピー」も演奏されたが、それを振り返る際宮本は「女性の曲でキーが高くて、下げよう下げようと思ったが、そのままで歌った」と言っていた。当然ながら「喝采」も原曲のキーで歌っていて、曲に対するただならぬリスペクトを感じた。「喝采」を歌う際宮本は、「真似をしないよう心がけた」とも言っていたが、曲を忠実にカバーしながらも「エレカシらしさ」がしっかりと出ていて本当にすばらしいカバーだったと思う。終盤に差し掛かってきたカバーアルバムにふさわしい1曲になるだろう。

 

 

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Track 08. サムライ/沢田研二 

この曲もNHKの番組『The Covers』が主催する「The Covers' Fes.」で披露された。それ以前にもフジテレビ系列の『LOVE LOVE あいしてる』いう番組でカバーされていて、どちらもすばらしい完成度だった。宮本はラジオ番組で以前、エレカシの楽曲には歌謡曲テイストのメロディーがあると言われたとき、「歌謡曲全盛の時というのは子供で、それベストテン番組やラジオを聴いていた。特に沢田研二の大ファンだった。その頃は優れた歌謡曲たくさんあった時代だった。自分の音楽はそういう音楽に影響を受けていて、実際にカバーしたりもする」というようなことを言っていた。宮本には幼いころから親しんできた歌謡曲のDNAが流れている。それはたとえ「ロックバンドのボーカリスト」となっても根底に残っているものであり、彼がひとたび歌謡曲を歌えば違和感どころか、ぴったりとはまってしまうのである。昭和を代表する歌謡曲の金字塔ともいえるこの曲は丁度いい具合に前の曲と次の曲をつないでいる感じがしたのでこの位置に据えた。

 

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Track 09. ファイト!/中島みゆき

ファイト! 戦う君の唄を 戦わない奴らが笑うだろう ファイト!冷たい水の中を ふるえながらのぼってゆけ

サビの歌詞は本当にすばらしい。中島みゆきに"ファイト!"と言われるのは、なんだか後光差し込む神々しい存在から優しく後押しされるような感じだ。そこには暖かさがあって、毛布に包み込まれるようである。一方宮本が歌うとどうなるかと想像してみたら、甲冑を纏った武神から荒々しく声をかけられ奮い立たせられるような感じだった。暖かさなんかは微塵もないが、座禅の時に警策で打たれたみたいにピシッと背筋が伸びる。うーん、これはこれでやる気にがみなぎってくる。そういうわけで、宮本からもファイト!と少々不器用に応援されてみたい。終盤に入って「喝」を入れるような1曲になることだろう。

 

Track 10. 主人公/さだまさし

「主人公」は2012年にフジテレビ系列の『Music Fair』の中でさだまさしと宮本がコラボした際に歌われた。"あなたは"と"主人公"の部分の歌いっぷりがまるで自分の楽曲ではないかと思わせるほどで本当に見事なカバーだった。この曲は"あなた"という2人称が使われるが、エレカシの楽曲にもこの2人称は度々登場する。「あなたへ」(2013)という曲があるが、どうもその世界観に通じるような気がしてならない。誰かに宛てて書いたというか、大切な人を思い出すようにして綴っている感じがどことなく似ている。〈あなたは教えてくれた 小さな物語でも 自分の人生の中では 自分がみな主人公〉と高らかに歌う様は是非とも音源として残してほしいものだ。

 

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後編へ続く…【ほぼ日刊三浦レコード19】

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