三浦日記

音楽ライターの日記のようなもの

【ほぼ日刊ベースボール10】松坂大輔の日本球界12年ぶりの勝利に寄せて

松坂大輔が、12年ぶりに勝利を飾った―。

 

遡ること12年前の2006年、当時の松坂は西武ライオンズのみならず、球界の絶対的エースとして君臨していた。その年の3月に行われた、第1回WBCでは日の丸を背負い、MVPを獲得。その勢いのまま迎えたシーズン、松坂はキャリアハイとなる17勝、さらには防御率は2.13という数字を叩き出し、文句なしの成績を残した。下は2006年の松坂の成績。

25試合 13完投 2完封 17勝5敗 勝率.773 投球回186 1/3 200奪三振 防御率2.13

しかしながら、ここまで申し分のない成績を残しながら獲得タイトルは「ゴールデングラブ賞」の1つだけ。というのもこの年には当時の絶対的エースとして忘れてはならないもう1人の人物、斉藤和巳が君臨していたからだ。彼はその年、ほとんどのタイトルを総なめにしてしまう程の活躍を見せる。下は2006年の斉藤の成績 (太字はリーグ最高記録)。

26試合 8完投 5完封 18勝5敗 勝率.783 投球回201.0 205奪三振 防御率1.75

ちなみに獲得したタイトルは「最多勝」、「最高勝率」、「最多奪三振」、「最優秀防御率」、「沢村賞」、「ベストナイン」、「最優秀選手 (MVP)」と、まさにゲームさながらの世界である。両者、何とハイレベルなタイトル争いなのだろうか。これ程までに白熱するタイトル争いというのは近年あっただろうか。そんな斉藤と松坂は、プレーオフ第1ステージで対決する。両チーム、息の詰まるような投手戦。この試合の軍配は松坂に上がる。松坂はこの年のシーズンオフにメジャー挑戦を表明し、レッドソックスへ移籍。斉藤はこの年以降ケガに泣かされ、一軍で思うような成績を残せなくなってしまう。結局、このプレーオフでの試合が、両者最後の投げ合いになってしまった―。

f:id:xxxtomo1128xxx:20180501001905j:plain

そんな12年前に思いを馳せるのはこのくらいにして、"平成"の怪物松坂が置かれる状況は、当時とはめっきり変わってしまった。球界のエースは次の世代へと移り変わり、年号もいよいよ"平成"が終わってしまうときた。彼自身に関しては、度重なるケガの影響で150キロ超の剛速球は鳴りを潜めてしまった。ただ、今の彼には長年の経験で培われた投球技術がある。変化球は以前よりも多彩になり、ツーシームやカットボールを多用し、バットの芯を外す投球スタイルへと変化した。さらに、球速は落ちたものの、ストレートや変化球のキレは相変わらず健在。ここ2試合はそんな"軟投派"へとモデルチェンジした松坂らしい打たせて取る良いピッチングをしてきたものの、肝心の打線や守備に味方されず2敗を喫していた。

 

そんな中での今日の114球の熱投、そして12年ぶりの日本球界での勝利。これは本当に見事だった。"平成の怪物"がようやく帰ってきたという感じがした。というのも身に纏うオーラ、これが今日の登板は段違いのようにみえた。ピンチになった際の独特の威圧感。"怪物の間合い"とでも言おうか、絶対に打たせないという気迫みたいなものが今日の登板においては随所に見られた。何というかそれは、たとえ球が荒れても、ボールが甘い所に行っても、相手打者を圧倒してしまうぐらいに凄まじいもので、それこそ往年の松坂の投球そのものだったように思える。

 

今回の登板は怪物が"ようやく目を覚ました"という感じか。少なくとも"最後の輝き"なんていうベテラン選手に対して言い放たれる枕詞は、彼にはまだまだ早すぎるように思える。長年彼を応援している身としては、今回の登板がリスタートとなり、速球派から軟投派へとモデルチェンジした平成の怪物の"第2章の幕開け"となることを切実に願いたい。

f:id:xxxtomo1128xxx:20180501001605j:plain