三浦日記

音楽ライターの日記のようなもの

【ほぼ日刊ベースボール14】東京ヤクルトスワローズ、交流戦での"覚醒"、そして"勝負強さ"

 東京ヤクルトスワローズの快進撃が止まらない。開幕直前、軒並み最下位と予想していた野球評論家を安堵させるかのように、最下位に鎮座し続けていたスワローズ。しかしながら交流戦に入ってからというもの、5月30日のロッテ戦での勝利を皮切りに7連勝。そして、あれよあれよと勝利を重ね、6月14日現在、交流戦の順位は首位、セ・リーグの順位においても2位に鎮座している。いやはや、このとんでもない"燕ブースト"の裏にはいったい何があるのだろうか。

 残りの試合数に違いがあるため一概には言えないが、まずは交流戦におけるスワローズのチーム成績を見てみる。攻撃面においては打率:9位、本塁打数:6位、得点:3位と、少ない安打数で"効率良く"得点を重ねていることがわかる。そして、守備面においては防御率:2位、失点:2位と、昨年まで課題だった投手陣にも"安定感"が見られる。

 守備面についてより具体的に掘り下げてみると、なかなか興味深いデータが現れた。というのも、スワローズの交流戦における6回以降のチーム防御率というのは"3.69"となっている。これは意外にも試合全体の防御率の"3.00"よりも高い。これが意味しているのは先発がQSもしくはHQSをし、中継ぎは崩れないように何とか踏ん張っているということなのか。

 答えはそうではない。

"勝敗"で分類してみるとその答えが浮き彫りになってくる。勝った試合の6回以降の防御率は"2.65"と安定している。だが、負けた試合では"7.50"と、大幅に崩れていることが分かる。つまりこの数値が意味しているのは、序盤で得点を重ねて、終盤中継ぎが多少なりとも崩れてもギリギリで勝ち切るような"大味の"試合ではなく、序盤に取った少ない得点で"確実に守り切っている"か、終盤に逆転し少ないリードを守り切っているという試合をしているということなのである。実際スワローズは、交流戦11勝のうち8勝は序盤に勝ち越した少ないリードを守り切って勝利している。さらに、逆転勝利を3回収めているが、いずれも6回以降の得点となっている。

 この"勝てる試合"を絶対にこぼさない終盤の強さを可能にしているのは、1つには中継ぎ陣の"勝負強さ"にあるだろう。

 思えば、クライマックスシリーズに出場した2009年においては押元、五十嵐のリリーバーが安定感を示し、守護神林昌勇は28セーブを挙げた。

 2011年には、バーネット、押本、松岡のリリーバーがきっちりと仕事を果たし、林も32セーブを挙げる。この年は9月まで首位を独走するも、2位中日の猛追に遭い、最終順位は2位となったがAクラスである以上一定の評価はできる。前年に続き、先発陣リリーフ陣共に安定感を示した2012年。この年からはケガで離脱した林に代わってバーネットが守護神を務めたが、防御率1.82、33セーブと申し分ない成績を残す。チームも2年連続でAクラス入りを果たした。

 2015年は、2年連続でBクラスだった前年とは一転し14年ぶりのリーグ優勝を果たす。リリーバーのロマン、オンドルセク、秋吉はいずれも2点台前半の数字を残し、抑えのバーネットも防御率1.29、41セーブと「勝利の方程式」が確立されていた。

 スワローズがAクラスに入った年というのは当然ながらリリーバー、そして何よりクローザーがしっかりと役割を果たしているのである。

 では、今年のスワローズはどうであるか。4月8日にプロ初勝利を挙げて以来、飛躍を続けている中尾は交流戦に入ってからも7試合に登板し3ホールドを挙げている。そして、近藤は交流戦6試合に登板し、4ホールド。さらにカラシティーも5試合に登板し、4月の乱調がウソだったかのような安定したピッチングを見せている(現在は先発)。そんな盤石ともいえるリリーバーの後に控えているのは、新守護神の石山。石山はカラシティーの不調に変わってクローザーとして起用されて以来、15試合連続無失点を継続し、11セーブのうち8セーブを交流戦で挙げるなどすばらしい活躍を見せている。

 中継ぎ陣の"勝負強さ"。これは先に上げたAクラスに入った年のスワローズの投手陣を凌駕しているかもしれない。そして恐ろしいのは、中尾、近藤、そして石山という「勝利の方程式」はシーズン中盤の交流戦で、右肩上がりにで確立されてきたということだ。何というかそれは、ここ2年で遠ざかっていた勝ち方の感覚をこの交流戦で掴んだような印象さえある。

 「今現在、交流戦で優勝の可能性が一番高いのは東京ヤクルトスワローズ

 こんなこと誰が予想できただろうか。もしも"ブックメーカー"が日本に存在しているのならば、それはそれはとんでもないくらいのオッズにせり上がっているはずである。

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