三浦日記

音楽ライターの日記のようなもの

トルコにて、馬に乗る―ランペイジ 巨獣大苦戦

 午前中の授業が終わると、午後は何らかのアクティビティが待っている。この日はギョレメ国立公園の方向へとバスは向かった。目的地に到着するや否や、大きな円錐形の形をした岩と、おとなしく待っている馬が目に入った。どうやら今日は馬に乗るようだ。相変わらず日差しは痛いくらいに肌を攻撃し、風に巻き上げられた砂埃は小さな散弾のようにぶつかってくる。なんとすばらしい乗馬日和なのだろうか―。

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 安全のために第一次世界大戦さながらのデザインのヘルメットが配られると、現代に生けるカウボーイといった感じのおじさんによる乗馬のレクチャーが始まる。進みたいときは馬のお腹の所を蹴る、止まるときは手綱をひっぱる。方向は手綱を進みたい方向側に引く。という簡単な説明を受けていざ乗馬をする。いやはや、乗馬なんていつ振りだろう、小さい頃小岩井農場で小さめの馬に乗った時以来か―。

 馬の引き手はおらず、いきなり自分で馬を操る。日本のような「スタッフが馬を引いて、安全に乗馬できます。乗馬経験が全くない方でもできますよ☆」なんていう甘っちょろい考え方はトルコには通用しない。無論、初心者向けのチュートリアルなんてのもない、実務経験のみが己を育てるのである(とはいえ、しっかりとケガをした場合の保険に署名する必要があったので、その辺はしっかりしていた)。

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 馬は悠々と歩みを進めてゆく。何度も同じコースを歩いているためか、決して道を外れたりすることなく、一列になって行儀よく進んでゆく。石畳で舗装された坂道をしばらく登っていくとだんだんと視界が開けていき、今度はダートの道が続く。辺りを見回すと、カッパドキアの円錐形の奇妙な岩々が、波打ったように連なっている。それは、まるで真っ白い海のようだった。大小さまざまな大きさをした"波"は光の当たり方や陰によって見え方が異なる。動いてはいないけれど、生き物のように鼓動をしているような錯覚がしたのだった―。

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 乗馬の所要時間はおよそ1時間半くらい。当然ながらその間ずっと馬と一緒である。道中で馬はその辺に生えている草をよく食べていた。"道草を食う"とはまさにこのことである。それをなんとか制しつつ、いいペースで進んでくれたらほめてあげてやった。すると馬の方もそれにこたえるかのように、だんだんとしっかりと歩いてくれるようになる。そんなわけで、乗馬が終わりの方になると、馬に対する親近感がわいてきていた。馬よありがとうお疲れ様―。"美しい馬の地"という意味のカッパドキア。そんな場所で乗馬をし、奇妙奇天烈な風景の中、馬とコミュニケーションをとりながら何ともゆっくりとした時間を過ごしたのだった。

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