三浦日記

音楽ライターの日記のようなもの

荒井由実の「天気雨」、雨の鎌倉

 9月の下旬に鎌倉に行ってきた。鉛色の空からは冷たい雨が降っていて、由比ヶ浜の地平線の方はどんよりと白く曇っていた。そんな天気にもかかわらず、堤防越しに海岸を見るとサーフィンをする人、沖の方にはヨットがぼんやりと見えた。渋滞している車のテールランプの赤は、くっきりと浮かび上がってくるように目立っていて、心なしかそれ以外の風景の色はモノクロみたいに見えるのだった。

 雨の鎌倉は、長袖を着ないと震えてしまうくらいに寒かった。晴れていたらそれはそれはきれいな景色なんだろうな。海沿いのバス停で、傘をさしながらそんなことをふと考えていた。

 その日は"本降りの雨"で、"天気雨"なんかではなかったけれど、由比ヶ浜の海辺を見ていたらなんとなくこの曲が思い浮かんだ。

 サーフボードを直しに湘南に行った彼についていくように、相模線に乗って会いに行く彼女。そんな2人連れが湘南の砂浜で戯れていると、晴れていたはずなのに急に雨が降ってきた。やがて水平線の方の雲は低くなり、もやがかかってくる。雨はだんだんと強くなり、2人の体に打ち付ける。夏の初めの通り雨。思わず漏らした「ついてないのは誰のせい?」という言葉―。

 でもそれは、誰のせいでもないんだろうな―。晴れた日に、陽光に反射して輝く海と白い砂浜だけが海の姿なのではない。雨の日に、波が荒れに荒れて水平線が見えなくなるときだってある。そもそもそんなことに一喜一憂して、ついてないななんて思っても何かが変わるわけではない。あるいは他の人にとってみたら案外最高の1日になっているのかもわからない。

 そんな風に考えてみると、物事を軽く考えてみるのもいいのかもしれない。「別に雨だってしょうがないか」、みたいなくらいが人間ちょうどいいのかもしれない―。なんて寒さに震えながら、ましてや最高のロケーションの前で、そんな振る舞いができるかと言ったらそれはまた別なんですが……。【ほぼ日刊三浦レコード65】

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