三浦日記

音楽ライターの日記のようなもの

三浦的2018年ベスト・アルバム5選―邦楽編 (まえがき)

 邦楽というのは、必ずしもアメリカ、あるいはイギリスの流行と直接リンクすることというのはあまりないような感じがします。"ガラパゴス化"なんていう言葉が、日本の携帯電話を揶揄するときに使われたりしましたが、それは音楽においてもきっと同じことが言えるのだと思います。それに拍車をかけているな、と思うのが、日本の音楽市場の状況です。というのも日本の音楽市場は現在、世界で第2位になっていますが、昨今のサブスクリプションの流れには乗っておらず、依然としてCD戦略が盤石です(確かサブスクリプションの割合は10%台だったと思います)。

 今年の紅白歌合戦を大いに盛り上げた米津玄師ですが、サブスクリプションの配信はありません。さらに先日リリースされた星野源の『POP VIRUS』も、残念ながらサブスクリプションの配信はなく、初回限定盤なる複数形態での販売がなされていました。そして筆者はまだ、彼らの新作を聴けていません。レコード屋に行って試聴できたらいいのですが、なかなか時間をとることができず、行けなくて。しかも、今新作のCDを普通に買おうとしても、大体3000円ぐらいはするんですよね。これはお金のない学生にとってみれば少々値が張ります。

 そう考えてみるとサブスクリプションというのは便利だなとつくづく思います。1か月に30枚アルバムを聴いたとしたら、1枚当たり15~30円くらいで聴けてしまうんですから。しかも、今まで興味がなかったアーティストをいいなと思えるきっかけにもなると思います。なにせ聴き放題ですから、視聴感覚で聴ける節もあるのです。

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 個人的にサブスクリプション解禁を望んでいるのは、WANIMAとMy Hair Is Bad。ただ、彼らは解禁しそうにないですね。これは完全なる偏見なのですが、WANIMAを聴いている人はCDを買って(またはレンタルをして)、カーステレオで爆音で流すだろうし、マイヘアを聴く人は、何よりも紙の質感だとかアナログチックな部分に感傷性を求めるように思うからです。やっぱり日本人というのはものを"形として"残しておきたいのでしょうか。これに関しては、電子書籍もそこまで流行っていないことからも、あながち間違いでないような気もします。

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ジャケットのカラーからわかるように、彼らがレゲエの"ジャーラスタファーライ"的なノリを持っているのだとすればやはり、「サブスクリプションなんていう、文明の利器を象徴しているものに頼るもんか」というのにうなずけなくもありません。けれどもこのジャケット、世界中、はたまた宇宙中(?)の人たちで地球を支えあっているんだから、全世界、グローバルに発信したらいいのではないか、という提案もしたいなとも思ってしまうのです。

 そんな"ガラパゴス化"し始めてきた日本の音楽というのは、評価をするのが非常に難しくなってきました。というのも、CD販売に依存しているという現状もそうですが、音楽媒体におけるメインストリームが一体どこにあるのかという問題が生まれてきたように思えるからです。少なくとも20年前は圧倒的にテレビがその地位を誇っていたといえるでしょう。しかしながら、その牙城は1990年代後半のインターネット、さらにはフェスの登場によって揺らぎ始めることになります。とはいえこの牙城はあくまでも揺らいでいるだけで、なかなか崩れることはありませんでした。

 それが明らかに崩れ始めたように思えるのは、2010年代以降、"城"が老朽化したかのように"テレビ離れ"が加速する一方で、インターネット配信、さらにはフェスの規模はどんどん拡大していきます。そして2015年、日本にサブスクリプションが上陸します。さらに近年は、ライブ配信も増えてきました。最近だと2018年のフジロックフェスティバルの模様がYouTubeで配信されたのが記憶に新しいでしょうか。こうなるとテレビなる"牙城"はすでに崩れ、その周りにある城下町に、城のように強大なものがどんどん立っている状況です。

 その中で、どう評価するのかが非常に難しいのです。たとえば、フェスですごく盛り上がったけど、テレビで全然注目されていないアーティスト。その逆もあるでしょう。あとは、サブスクリプションですごく流行っているのに、CDの売り上げはいまひとつ。その逆、あるいはそもそもサブスクリプションで配信を行っていないアーティストがいるかもしれません。なんというか、評価の場所が二重にも三重にもなっているような気がするんですよね。

 そこで今年思ったのは、やはり個人にゆだねられる部分がより大きくなったなということです。つまり、音楽に触れる選択肢が幅広くなったことで、より主体的に音楽を聴くことができるようになったということです。もっといえば、自分の中で流行を作り上げていくような感じです。たしかに、流行の音楽というのは今年も一定の傾向はありましたが、そんな中でも音楽に対する取捨選択が容易になっているような印象があるのです。この流れはさきほど"ガラパゴス化"と書きましたが、サブスクリプションの割合がぐーっと伸びていくとより加速するように思えます。ただまあ、今のメインストリーム然としているものが無秩序に乱立した状況も面白いなと思いつつ、これを書いているわけなんですが。そんな今年の音楽で、個人的に選んだアルバム5選はいよいよ次回です。

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